ひげ紳士の考えるヒント

日々の感想を言葉に

盗人

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例えばあなたが米を作る農家だとしよう。稲作は苗を育てることから始まり、その苗を植え、水田を管理しながら稲が頭を垂れるのを待ち、それから収穫を行うわけだが、その米が倉庫から一晩のうちにすべて盗まれてしまったとしたらどう思うだろうか。ちなみに私の故郷ではこの手のことが毎年のように発生する。

盗人には、農家の米を作るまでの手間暇がどれほどのものか、想像する力がないのだろう。

というのも、とある友人Aから、Aの知人であるKに金を貸したのだが連絡がつかなくなった、どうしたらいいかと最近相談を受けた。金額はおよそ10万円ほどだそうだが、Aは何が何でも取り返したいわけではなく、ただBとの友情の結末がこのような形になったことがただただ悲しかったらしい。私は助言らしい助言が思いつかなかったから、そのうち向こうからふらっと返しにくるかもしれないから気長に待てばいいとだけ言った。

それからBがどうして金を持って行方をくらましたのか、私は色々と想像を働かせてみた。単純に彼が生活に困窮して金を欲したと仮定すれば、おそらく彼は長期的な視野で自分の生活を見つめることができないくらい追い詰められていたのだろうと思う。10万ほどの金額であれば働いて返せる範疇の借金だが、Bには途方もない金額に思われたのかもしれない。何か技能を身につけそれを活かして仕事を見つければ、借金どころか、逆に気前良く仲間にご馳走ができたかもしれないではないか。きっとBは自分に何一つ期待できない人間なんだと思う。そして彼は自分の人生に絶望さえしている。彼のこれからは暗闇しかない。

どんな人間であれ、自分自身から逃れることはけっしてできやしない。金を借りた友人から逃げられても、金を返さなかった卑怯な自分が影のように一生ついて回る。彼が救われる道は果たしてあるのだろうか。

盗人の人生についての考えの糸はここで切れたままだ。でも世の中の平和のため、盗人はすぐにあらためて善い行いをしてもらいたいと思う。